勿体無い自分
まだ食べられるのに廃棄してしまう「食品ロス」が大きな問題になっています。日本では年間646万トンもの食品ロスがあると推計されています。世界では総人口の9人に1人が飢餓で苦しんでいる状況にも関わらずです。
日本人は昔から食べ物や生活品に対して残すと「もったいない」という感情を持つ人が多かったはずです。これは仏教の教えに起因します。「もったいない」とは仏教用語で「勿体無い」と書きます。「勿体」は本来あるべき姿のことです。ですから「勿体無い」とは本来あるべき姿ではないということになります。仏教では、食卓に出された料理をすべて食べることが本来
のあるべき姿であり、どんな高級な洋服でも飾っておくのではなく着ることが本来の姿だと考えます。
仏教には「一切衆生悉有仏性(いっさいしゅじょうしつうぶっしょう)」と言う言葉があります。すべての生きとし生けるものには「仏性」が存在するという意味です。食べ物にも、衣服にも、自然界の草花、樹木、土や石にも仏性が宿っていると考えます。ですから、出された食べ物には多くの食材となった生き物の仏性が、食べ物を自分が食べる食卓に用意してくれた多くの人々の仏性が込められているのです。その生き物の命と、多くの人々の手間、思いに感謝して残さず食べるのが本来ある姿なのです。
こう考えると私たち人間も勿体無い存在かもしれません。
本来、仏性を持っている存在なのに、三毒(貧・瞋・痴)に冒され、欲望のままに生きてしまい、自分の内なる仏性に気づけないでいませんか。まずは、仕事、家事、学習等、やるべき事に打ち込むことが仏道修行となります。
今やるべき事に真剣に取り組んで自分の内なる仏性の種を大切に育てていきましょう。
