山花開似錦
今年も境内の桜が咲きました。住職の母が寺に嫁いで来た時にはもう境内にあったと言っていましたので樹齢60年を超える老木です。
ここ数年の夏の猛暑と度重なる暴風雨で何本も太い枝が折れ、今年は咲いてくれるか心配しておりましたが、今年も優美な満開の桜を見せてくれ
ました。
山花開似錦澗水湛如藍(さんかひらいてにしきににたりかんすいた
たえてあいのごとし)という禅語を紹介します。
中国宋代の禅僧、大龍禅師に修行僧が問うた。
「形あるものは必ず滅びます。永遠に変わらぬ真理はあるのでしょうか。」
すると禅師は「山花開いて錦に似たり澗水湛えての藍の如し」と答えたという。
自然の風光をあらわす美しい詩句ですが禅的な意味はもっと深いです。春が来て山に咲いた花は錦のように美しい。しかし、時間が経てばその花は散ってしまう。藍のように碧くたたえる澗(たに)の水もゆっくりとだが動いている。あっという間に散る花と、動いていないようで動いている澗の水。速さに差はあれど、どちらも変化し続けていることに違いはない。
その変化こそ永遠に変
わらぬ真理なのだと大龍
禅師は説いたのです。
花は散るからこそ美し
い。あっという間に散っ
てしまう存在でありなが
ら無心に精一杯咲く。
咲くか咲かぬか心配し
ていた私の心の小ささを
実感しながら、満開の桜
を見て、自然の荘厳さと
恩恵を有難く思いました。
