坐禅会377「新しいリーダー」

 もうすぐ別れの時節、3月です。
 私は以前、小学校の教員でした。3 月の学校行事と言えば卒業式ですが、もう一つ大切な行事があります。それは、5 年生が中心になって行う6年生を送る会です。
 5 年生は、これまで学校のリーダーを務めてくれた6 年生のために感謝の気持ちを伝える会を計画し下級生に協力をお願いします。そして、5 年生を中心に下級生みんなで歌やメッセージ、手作りのプレゼントを贈ります。準備にはとても時間と労力がかかりますが、その行事を通して5年生は新しい学校のリーダーとなるのです。
 私は、故人、特に親や恩師のお葬式も同じ意味を持っていると思います。
 お釈迦様は、自分の命があとわずかだと悟った時に、嘆き悲しむ弟子に対して「私の死を嘆き悲しむな。生まれたものは必ず死ぬ。これは誰も免れることはできない。だが死ぬのは私の肉体である。本当の命は私が説いた教え、法の中にある。それに気づいて実践するならば、そこに私は生きているのだ。自らを灯明し、法を灯明とせよ。」とおっしゃいました。
 お葬式は、単なるお別れ会では無いです。残された者が故人の為に感謝の気持ちと仏界での安心を願う事で、自分自身も故人に頂いた教えや恩を思い巡らし、新しい人生のリーダーとしての自覚を持つ行事であると思います。
 時代の流れの中で、お葬式の形も様々に変容していますが、その意味は不易なもの、変わらないものであると思います。

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