回光返照の退歩を学すべし
道元禅師『普勧坐禅儀』
曹洞宗のご開祖道元禅師は、み仏の教えを学ぶという事は、今の自分の姿
をよく観て、自分の内にある我利我欲を自ら制御し、繰り返し点検すること、
その行為が迷いの身心から脱落し、真の自己が成就することだと教えられま
した。
道元禅師のお言葉「回向返照の退歩を学ぶべし」は『普勧坐禅儀』の中の
お示しです。
回光返照とは、他人の言葉に答えを探し他人の考えに追随している自分を
見直しましょうという意味です。退歩とは退化ではなく、自分の内に目を向
け物事の根本に立ち戻ることです。
外に向かって求める心というのはなかなか止めることができません。有名
人の講演があれば出かけて行き、生き方のベストセラー本を見つけては読ん
でみる。スマホに質問を打ち込んで、誰かしらのもっともらしい回答を信じ
る。他人の考え方や著名人の「おことば」ばかりを有り難がってはいないで
しょうか。
私は大本山永平寺での安居( 修行) 中、外界の情報をまったく知ることが
できませんでした。初めは不安でしたが御山で坐禅三昧の生活をしていると、
返って自分が大切にしているものがはっきりとして不安が無くなりました。
様々な情報が手軽に得られるようになった現代社会ですが、返って情報に
振り回されて悩む人、苦しむ人が増えているように思います。
そのような時代だからこそ、日々の生活の中で本来の自分を見つめて、あなた自身が大切にするもの、志向するものをしっかり振り返る時間をつくることが大切ではないでしょうか。
他人の考えばかりなぞっていると本当の自分を見失ってしまいます。
本来、人は我利我欲を離れ、和合和睦に向かおうとする自浄心を持ち合わせている存在です。
中学校生活、そしてこれからの人生、進路や人間関係、多くの困難に遭遇すると思いますが、自分の大切にしていることを見失わずに一日一日を大切にお過ごしください。
谷田山東光寺住職石田泰光合掌