坐禅会 非思量NO.337 無寒暑之処

無寒暑之処むかんじょのところ

 まだ5月なのに猛暑日の日が増え、年々過ごしやすい時期が短くなっているように思います。『碧巌録』の中に「無寒暑」という禅問答があります。

 ある僧が、洞山良介に尋ねました。

 僧 「ひどい寒さや暑さが到来したときには、どう避ければいいので    すか。」

 洞山「寒さや暑さのない世界に行ってしまえばいいではないか。」

 僧 「そんな世界は、どこにあるのですか。」

 洞山「寒いときには寒さでおまえを殺し、暑いと感じたときには暑さ    でおまえを殺せばいい。それが、寒さや暑さのない世界だ。」

 寒さを感じたときには徹底的に寒さになりきり、暑いと感じたときには暑さになりきってひたすらに生きればいいというのです。

 『臨済録』に「仏に逢ったら仏を殺し、祖に逢ったら祖を殺し、羅漢にあったら羅漢を殺せ」という言葉があります。ここでいう「殺す」とは、真正面から対象に向き合い、徹底的に考え、突き詰め、同化して、その上で自分なりに乗り越えて行けということです。生半可な気持ちで取り組んでは、こちらが「殺されて」しまうでしょう。

 同じ意味で「心頭滅却すれば火も自ずから涼し」は織田信長に火をかけられた甲斐国恵林寺の快川紹喜によって有名になりました。火をかけられたときにそう発して自身を火に包み込んだといいます。

 とてもそのような真似はできませんが、無心に一つになりきることが苦悩を乗り越える道であります。

 祖師菩提達磨禅師から脈々と続く禅の神髄でもあります。

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