非思量 NO.327

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冬雪冴えてすずしかりけり

 今年もいよいよ残り一週間となりました。列島に寒気が流れ込み、冬の寒さも身にしみる年末です。
 こんな日に思い出すのは先代住職が好んだ道元禅師の和歌「春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえて すずしかりけり」です。
 子どもの頃、私が疑問に思ったのは、なぜ冬の雪がすずしいのだろうという事でした。
 大人になり、「すずしい」の意味が「心が清々しい」「わだかまりがなくさっぱりしている」という意味である事を知りました。そして、永平寺に安居し、雪で真っ白に覆い尽くされた御山で修行生活を送る日々を通して、大自然の中で共に生かされている自分を認識し、「すずしかりけり」の本当の意味を実感いたしました。
 英語にcool(クール)という言葉があります。若い人は「いいね」「最高だね」という意味でこの言葉を使います。
 まさしく自然の恵みや四季の移ろいは、素晴らしく最高のものです。 自然の美のありのままを素直に詠まれた道元禅師のお気持ちは、そのまま仏の御命(おんいのち)であり、禅の世界です。
 体験を通して大自然と一つであることを実感すること、その境地になりきるのが坐禅の姿です。
 今年は本堂新築工事の為、客殿での坐禅会開催となりましたが、仏の御命は、世界中のあらゆる場所に恵みを与えてくれています。それを実感するのが禅なのでしょう。
 これからも、御山で修行させて頂いた気持ちを忘れずに、先代から引き継いだ早朝坐禅会を続けていきます。

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