非思量 NO.323

吾我こがを離れる

 今回は前回述べた「有為と無為」に関連して、道元禅師の示した教訓を紹介いたします。

「ある日、示して言われた、仏道修行においては、必ず吾我を離れ  なければならない。たとえ千万のお経や論書を学んだとしても、
 自分自身に対する執着を離れなかったら、結局、悪魔の穴に落ち
 込んでしまう。」

 仏道の修行は自分自身を知ること、私とは何者なのかを明らかにすることから始まります。自分自身を知るということは、誰もが自己中心的な考え方をもっている為、何事も自分を中心に考えてしまって、そのようなエゴイズムな生き方が返って自分自身を苦しめていることを自覚するということになります。この自覚がないと、いくら仏教の勉強をしても駄目で、ついには魔の世界に落ち込んでしますのです。 最初から修行の方向が間違っていたら、努力すればするほど間違った方向に行ってしまうという事です。

 「一生懸命勉強して、修行して、悟りを開いて、人から尊敬されたい、有名になりたい。」と言えば、すばらしい志のようですが、それは所詮、吾我(エゴ)のままの生き方であるから本当の悟りは開けません。強い自我意識が道を妨げるのです。この生き方は前回述べた「有為」の生き方と変わらず、どこまで行っても迷いの道です。吾我を離れないと本当の修行は始まらないのです。

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