非思量NO.316

焼    香

仏事における香は、欠かすことのできない大切な供物です。
あらゆる法要の際に線香が供えられ焼香がなされます。もちろん葬儀においても同様です。『大般涅槃経(だいはつねはんきょう)』には、お釈迦さまの葬儀の際にも香が大いに用いられたことが述べられています。
仏教では、仏さまは香を好まれ、香を焚くその香りが縁となって、香が焚かれるその場に降臨されるという信仰があります。
また、香が仏教においていかに重んじられているかは、その言葉が用いられる頻度から見ても一目瞭然です。たとえば雲水が修行する禅寺の食事では、ご飯のことを香飯(きょうはん)、汁物を香汁(きょうじゅう)、おかずは香菜(きょう ざい)、お茶は香湯(こうとう)と呼びます。
はるか昔のインドにおいても、香は仏教が生まれる以前から生活の必需品でした。焼香として部屋を浄めたり、体に塗って体臭を消したりする為に使用する事は、実用性はもちろんのこと来客を招く際の大切な礼儀でもありました。
さらに仏教では、香を焚いたその香りによって、邪気を払い空間を浄めることができるとも考えます。葬儀における焼香には、故人を清浄な仏さまとして送るという意味や、葬儀場を浄らかで荘厳なものにするという意味、葬儀場に諸仏諸菩薩さま方をお招きするという意味などが含まれています。故人の成仏を祈りまごころを込めて焚く香は、故人だけでなく焼香をする本人の身心をも清浄で穏やかなものへと導いてくれます。

香木について

木材そのものに芳香を有する木を香木といいます。
代表的な香木は、沈香(ぢんこう)、伽羅(きゃら)、白檀(びゃくだん)の三種です。

沈香

ジンチョウゲの樹木。木質部に様々な外的要因が加わるこ とで樹脂が凝固し、樹木自体が枯れていく過程で熟成されてできます。東南アジアの熱帯雨林で産出され、「水に沈む香りのする木」ということから「沈水香木」(略して沈香) と呼ばれます。

伽羅

沈香のなかで最上の品。香気や油質の違いによって沈香の中でも格別の芳香を放ちます。古来より生産量は少なかったのですが、現在では採取が非常に困難になっているため一層貴重となっています。

白檀

ビャクダン科の樹木。幹部の芯に香りがあるため、芯材を
削り出して使用します。薬用、薫香用、彫刻工芸品、扇などにも使用され、洋の東西を問わず親しまれてきた香木です。

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