非思量 NO.311

本当の喜び         般若心経を学ぶ⑩

 羯諦     羯諦     波羅羯諦    波羅僧羯諦    菩提     薩婆訶ぎゃてい     ぎゃてい      はらぎゃてい    はらそうぎゃてい    ぼ  じ       そわか

『般若心経』の最後の経文は呪文です。これは敢えてインド語から中国語に訳した三蔵法師たちが申し合わせて翻訳しないでおこうと約束したからです。訳すと「行った者よ、行った者よ、向こう岸に行った者よ、向こう岸に完全に行った者よ、さとりよ、おめでとう」という意味です。
『般若心経』の教えの中心であった「般若波羅蜜多」(完成した智慧) がどれほどすばらしいか褒め称えているのです。だからこそ原文のまま唱えてもらおうと考えたのです。
誰しも何かを完成させた時や一つのことを成し遂げた時は、とても良い気持ちになります。登山をして頂上まで登り切った時や、わからない問題がやっと解けた時、言いようのない感動が心に湧き上がってくるでしょう。そういう体験は、自分だけでなく周りで見ていた人も良い気持ちになり
ますね。オリンピックで日本人選手が活躍する姿を見ると、自分の事のように嬉しくなるあの気持ちです。
「ボージーソワカ」(さとりよ、おめでとう)とはそんな晴れ晴れした気持ちを表しています。
み仏の智慧を自分のものとされ、本当の喜びを知った観音さまが、舎利弗を相手にして、満ち足りた智慧の心を伝えようとした、その感動こそがこの最後の一節に凝縮されているように思います。

私たちが一日一日の生活をみんなと一緒に仲良く暮らすことができるのは、一人ひとりが、この喜びを体験することから始まるのだと『般若心経』は教えているのです。

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