非思量 NO.302

臘八接心ろうはつ せっしん

 12月8日は釈尊が菩提樹の下で禅定に入って成道された(悟りを開いた)日です。中国の陰暦ではこの日を臘八(臘月八日)といいます。

 禅宗の寺院では釈尊が坐禅によって成仏得道した故事に倣って、12月1日から8日の朝まで坐禅修行に打ち込みます。

 私は、今から30年程前に大本山永平寺に安居した際に初めて臘八摂心の修行を行いました。

 早朝から夜の就寝まで食事と排泄以外は坐禅三昧の日々です。今でも薄暗い僧堂の壁を半眼で見つめ続けた情景が思い出されます。

 只ひたすら坐るだけの行為でしたが、なかなか接心の言葉のように心を集中して坐ることができませんでした。それでも、八日目の朝には、坐禅修行に打ち込んだ故に得られた心境の変化があったことを覚えています。

 以下は、当時「傘松」という永平寺の季刊誌の原稿を頼まれて書いた随筆の一節です。

 12月27日、早朝から厳しい寒さを感じました。
辺りが明るくなると、空よりも地面が明るいことに気づきました。この冬初めての積雪です。
 私は静岡出身の為、雪が積もった情景を見る機会があまりありません。雪化粧した永平寺七堂伽藍は美しく、そして体の芯まで冷える寒さで私の前にその姿を現しました。
 上山して数カ月が経ち、御山の生活にも慣れ、気持ちの緩みがちな私にその寒さは気を引き締めろと忠告してくれているかのようです。
 私の本日の公務は直寮。本衆寮の位で午前
5時30分を告げる更点(鐘の音)を聞いて、大庫院へ仏菜擎盤に向かいました。
 御山の一日の始まりです。
安居中の小住
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